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第24回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

~溶接という仕事~

 

 

溶接とは、金属を溶かし、一体化させる技術である。
単純に見えるが、その中には高度な物理と化学、そして熟練の経験が詰まっている。
「溶接が建物をつくる」と言っても過言ではないほど、建築・機械・プラント・造船など、
あらゆる産業で不可欠な仕事である。


1. 溶接の原理

溶接は、金属同士を加熱し、分子レベルで融合させる技術である。
接合部分が一体化することで、ボルト締結よりも強い結合力を発揮する。

主な溶接法には以下のような種類がある。

  • アーク溶接(被覆アーク・半自動・TIG)
     最も一般的。電気アークの熱で母材と溶接棒を溶かして接合する。

  • ガス溶接
     酸素とアセチレンを燃焼させて金属を加熱。細かい部品の補修などに使用。

  • レーザー溶接
     高エネルギーのレーザー光で精密溶接。ロボット化が進む分野。

  • スポット溶接
     薄板同士を圧力と電流で瞬間的に溶着する。自動車業界などで多用。


2. アーク溶接の技術

溶接の中でも最も汎用性が高いのがアーク溶接である。
特に建築鉄骨では、被覆アーク溶接(手棒溶接)とCO₂半自動溶接が主流となる。

溶接の基本は「溶け込み」と「ビード形状」。
溶け込みが浅ければ強度不足、深すぎれば母材の変形を招く。
適正な電流・電圧・速度を維持しながら、一定のビード(溶接線)を形成することが重要である。

職人はアークの音で状態を判断する。
良好な溶け込み時は「サーッ」と安定した音が鳴り、
不安定な場合は「バチバチ」と不均一な音に変わる。
音・光・溶融池の動きを同時に見極める感覚こそ、熟練の証である。


3. 溶接欠陥と品質管理

溶接部には、外観では見えない欠陥が生じる場合がある。
代表的なものに以下が挙げられる。

  • 溶け込み不足

  • スラグ巻き込み

  • ピット(気泡)

  • クラック(割れ)

  • アンダーカット(母材削れ)

これらは強度低下を招くため、非破壊検査(NDT)によって確認する。
磁粉探傷(MT)、浸透探傷(PT)、超音波探傷(UT)などの手法で内部状態をチェックし、
品質保証を行う。


4. 職人の感覚と姿勢

溶接は科学でありながら、極めて感覚的な仕事でもある。
風の影響、母材温度、姿勢、アーク長。
これらは現場ごとに変化し、教科書通りの条件では成立しない。

職人は“手の記憶”で最適な条件を探り、
同時に安全と品質を両立させる。
それはまさに、火と金属を操る「工芸技術」と言える。


5. まとめ

溶接とは、鉄を融合させ、形を創り出す技術である。
単なる接合ではなく、構造そのものを支える「根幹の技」。
火花の一筋一筋に、職人の集中と経験が宿っている。

 


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第23回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

~“構造を支える精度の世界”~

 

 

鉄骨加工とは、建築や橋梁、機械設備などあらゆる構造物の「骨格」を形づくる基幹産業である。
建物が地震や風、長期使用に耐えうるかどうかは、図面上の設計だけでなく、現場での鉄骨加工の精度にかかっている。
言い換えれば、見えないところにこそ、建物の安全と寿命を決める技術が存在している。


1. 鉄骨加工とは何か

鉄骨加工は、鋼材を切断・穴あけ・溶接・組立・塗装といった工程で、設計図どおりの構造部材を製作する仕事である。
工場内での作業が中心となるが、溶接・組立後の仮組検査、現場搬入・建方など、最終的な建築構造まで密接に関わる。

一般的な加工工程は以下の通りである。

  1. 材料受入検査
     H形鋼、角パイプ、プレート鋼板などを受け入れ、材質証明(ミルシート)と照合し、異材混入を防ぐ。

  2. 切断
     バンドソー、レーザー、プラズマ、ガス切断機などを用いて、設計寸法に正確に切断する。
     熱による伸縮を想定した補正値を考慮し、±1mmの精度で加工する。

  3. 孔あけ・開先加工
     ボルト接合部や溶接準備箇所に穴や溝をあける。ボール盤やNCドリルによる精密加工が主流。

  4. 仮組立(仮付け)
     各部材を仮に組み、通り・直角・対角寸法などを確認する。ここで誤差が出れば、建て方全体に影響が出る。

  5. 本溶接
     溶接により部材を一体化させる。熱による歪みを抑えるため、溶接順序や熱入力を管理する。

  6. 仕上げ・塗装・検査
     歪み取り、表面仕上げ、防錆塗装を行い、超音波検査(UT)や磁粉探傷検査(MT)で内部欠陥を確認する。


2. 鉄骨加工の精度と誤差管理

鉄骨加工の現場では、「誤差ゼロ」はあり得ない。
重要なのは、「許容誤差内に収める」こと。
日本建築学会(AIJ)やJIS規格では、建築鉄骨の寸法公差が細かく定められており、
工場ではそれを基準にミリ単位で管理している。

例えば、柱の長さ公差は±1mm、梁の直角度は0.2mm/m以下など、
製品が数十トンにも及ぶことを考えると、驚くほど精密な作業である。

測定にはレーザー距離計、デジタルハイトゲージ、三次元測定器が用いられ、
測定結果は品質記録として残される。
このデータが後の構造検査や施工精度保証につながる。


3. 鉄の性質を理解すること

鉄は、熱を加えると伸び、冷えると縮む。
その変化を理解しなければ、高精度な製作は不可能である。

溶接時に発生する「熱歪み」は、鉄骨加工最大の課題の一つだ。
例えば、片側だけ溶接すると、熱膨張の影響で材料が反る。
これを防ぐために、職人はあえて逆方向から順に溶接したり、
熱入力を均一に分散させる技を駆使する。

この“熱との対話”こそ、鉄骨職人の経験値であり、
機械化が進む現代でも、人の感覚が不可欠な理由である。


4. 鉄骨加工の魅力

鉄骨加工は、製品の完成を見届ける喜びが大きい仕事である。
工場で製作した一つの柱や梁が、建築現場で巨大な建物の一部となり、
空間の中で人々の安全と生活を支えていく。

そして何より、「見えない場所で社会を支える仕事」であること。
その誇りが、職人たちの原動力であり、
鉄骨加工という仕事の真の魅力と言える。


5. まとめ

鉄骨加工は、単なる製作工程ではなく、建築の“根幹技術”である。
寸法、熱、強度、そして人の技術。
それら全てを組み合わせ、建物を成立させる。

鉄の構造物が立ち上がるとき、その基礎には必ず無数の職人の知恵と努力がある。
鉄骨加工とは、建築を裏側から支える“精度の芸術”である。

 


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第22回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

「図面どおり」を“口約束”にしないのが品質管理(QC)の役割です。鉄骨は製造+建設のハイブリッド。工場内での精度・溶接品質・塗装耐久に加えて、現場建方で“すんなり入るか”まで保証してこそ本当の品質です。本稿は、日々の検査手順と記録、測定器管理、非破壊検査(UT/MT/PT)、判定基準、是正フロー、監査対応までを現場で使える粒度でまとめました。🧰📝

 

1|QCが“儲け”に直結する理由 💴➡️💹
• 手戻りは全てを高騰させる:再作・再塗装・再運搬・現場待機・工程延伸。1不良が複数工程のロスを連鎖させる。
• 早期検知>後工程発見:切断・孔あけ段階でのズレは“安く直せる”。溶接・塗装後は是正費×3の覚悟。
• トレーサビリティ=交渉力:材料ヒートNo.から溶接者コード、WPS番号、検査記録まで紐づけ。原因と責任範囲を明快に。🤝

 

2|検査体系の全体像(RACIで役割明確化)🗂️
• 受入検査:材料寸法・外観・材質証明(ミルシート)・ヒートNo.照合。R:品管、A:工場長。📦
• 工程内検査:切断後寸法、孔位置・径、開先角、組立仮付の直角・通り、溶接外観、歪み。R:各工程リーダー、A:生産管理。🛠️
• 中間検査(重要部):主柱・主梁・仕口、座金・スチフナの取付、穴ピッチ、仮付位置。R:品管、A:工場長。📌
• 最終検査:寸法総合、外観、NDT(必要部)、塗膜厚、表示・番付。R:品管、A:工場長。✅
• 出荷・現場受入:積載・ラッシング確認、現場寸法チェック、仮組有無。R:物流・現場、A:現場所長。🚚🏗️

 

3|寸法公差と“組立やすさ”の設計値 🎯
• 通り・直角・ねじれ:基準面を治具化し、ゲージ化(定規・当て板)で誰でも同じ測り方に。レーザー距離計・トータルステーションは最終確認に活用。📐
• 穴径・ピッチ・位置:NC孔は高精度だが、改定ミスが命取り。図面改定Rの突合せとNCデータの版管理を徹底。面取り・バリ取りはボルトかじり防止。🔩
• ベースプレート平面度・柱芯:建方でのレベル出し易さに直結。ワッシャ・ライナでの調整余地を前提に設計・製作。
• のど厚・余盛:隅肉は設計サイズの遵守が命。見た目を盛っても強くはならず、歪とコストが増すだけ。📏
• 社内基準の“図解化”:許容値は文章より図とNG事例写真で。合否判定を3秒でできる形に。🖼️

 

4|測定器・ゲージ管理(MPE/校正/ラベル)🧪
• 主要ツール:スケール・鋼製直角定規・巻尺(JIS1級推奨)・ハイトゲージ・デプスゲージ・レーザー距離計・トータルステーション(現場)、フィレットゲージ・ハイローゲージ(段差)・ピットゲージ。🧰
• 校正:年1回以上を基準に、校正記録とシリアルNo.で台帳管理。有効期限ラベルを本体に貼付し、期限切れは使用停止。
• MPE(最大許容誤差):測定器の不確かさを把握し、合否境界付近の判断は上位精度器で再測。
• トルクレンチ:締付工具は校正証明を現場提示できる状態で携行。⚙️

 

5|非破壊検査 UT/MT/PT の勘所 🔎
• UT(超音波):溶け込み不足・内部割れ・スラグ巻込み検知に有効。探触子・感度調整・カップラント管理。温度と面粗さで感度がぶれる点に注意。📡
• MT(磁粉):表面・近表面のき裂。湿式/乾式、白黒・蛍光。偏磁化(二方向)で見逃し防止。作業後は脱磁。🧲
• PT(浸透):非磁性材や仕上げ部の開口欠陥。前処理の脱脂が命。浸透→除去→現像→観察時間を守る。🧴
• 抜取率の決め方:重要継手は全数、標準部はAQLで抜取。仕様書・契約で事前合意し、現場判断にしない。
• 結果記録:写真・スケッチ・位置座標(通り×スパン×高さ)で再現性を確保。📷

 

6|塗装・前処理・環境条件の検査 🎨🌦️
• 素地調整:ブラスト/ショットで目標粗さ、ミルスケール・油分の除去。清浄度は目視サンプルで見える化。
• 塗膜厚(DFT):ウェット/ドライ双方で管理。角部の薄膜化に注意し、規定膜厚未達は“追い塗り”で是正。
• 環境条件:温度・湿度・露点差をログ化。結露条件下は塗装NGを徹底。🧪
• 付着・外観:ピンホール・たれ・白化・異物混入。必要に応じて付着試験(クロスカット等)で確認。

 

7|記録とトレーサビリティ:後から“辿れる”仕組み 🧷
• 材料台帳:ヒートNo.→部品No.→製品No.→現場番付まで一本線で追跡。
• 溶接マップ:継手ごとに溶接者コード・WPS番号・日付・NDT結果を記録。写真+QRで現場でも閲覧可に。📱
• 検査表テンプレ:受入・工程内・最終・塗装・出荷の各表を標準化。空欄を作らない設計にして記入漏れゼロ。

 

8|判定と是正:NCR→是正→再発防止→横展開 🔁
• NCR(不適合報告):現品隔離→識別→暫定処置。その日のうちに写真・数量・範囲を確定。
• MRB(判定会):再作・追溶接・肉盛り・機械加工・現場是正の可否を決定。構造安全と納期の両立を重視。
• 是正の作法:手順書化(範囲・方法・工具・検査)、過補修で母材を傷めないラインを明記。
• 原因究明:5Why/特性要因図。真因が設計・教育・設備・材料・環境のどこかを特定。
• 再発防止:標準改定、治具改良、教育、点検周期見直し。横展開で類似工程へ適用。📈

 

9|監査(内部/外部)と“即時提示”の仕組み 🗃️
• 証憑の棚:材料証明・校正記録・検査記録・WPS・NDT結果・塗膜厚ログ・出荷図を体系化。
• 即時提示:現場・客先にスマホで3タップ以内に提示できるよう、クラウドに集約。閲覧権限と改ざん防止を設定。
• 是正の実効性:監査指摘は期限・責任者・検証方法をセットに。完了報告は“写真+改定版”で。📌

 

10|QCダッシュボードとKPI 📊
• 一次合格率(工程別)/手直し率/不適合件数(百万溶接mmあたり)/校正期限遵守率/塗膜厚合格率/改定ミス件数。
• 現場ボードに当日不具合の“見える化”を掲示。翌朝ミーティングで是正+再発防止を回す。

 

11|“今日から使える”検査チェックリスト ✅
☐ 材料とミルシートの突合せ/ヒートNo.マーキング済
☐ NCデータの改定Rと図面Rが一致
☐ 基準面の治具化・通り/直角ゲージでOK判定
☐ 仮付位置・量の標準値を遵守
☐ 溶接外観:アンダーカット・オーバーラップ・ピット・割れの目視NGなし
☐ NDTの抜取率・部位が契約通り/結果を写真で保存
☐ 素地清浄・露点差・塗膜厚ログの保存
☐ 出荷前の番付・表示・保護材・ラッシング計画の確認
☐ すべての検査表に空欄なし/署名・日付完了

 

まとめ 🧭
品質は測り方の標準化+記録の一貫性+是正の速さで決まります。合否を“人の勘”から“誰が測っても同じ結果”に変えることで、現場トラブルは激減します。次回は材料学入門として、鋼材の規格・ミルシートの読み方・材料選定の勘所を、現場の判断に直結する形で解説します。🧪🔩

 

 

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第21回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

鉄骨加工の“品質の心臓”は溶接です。ビードは美観だけでなく、強度・靱性・疲労耐久・寸法精度まで左右します。本稿では、MAG/TIG/被覆アーク/SAWの使い分け、WPS/PQRの作法、典型欠陥のメカニズム、歪みを抑える溶接順序と治具、検査・是正までを現場に効く粒度でまとめます。‍‍

 

1|プロセスの使い分けと原理
• MAG(CO₂/MAG):鉄骨の主力。生産性・適用範囲が広く、板厚t=6〜40mmに多用。スパッタ管理とシールドガス流量(例:15〜25L/min)を一定に保つ。
• 被覆アーク(手溶接):狭所・現場補修・仮付最終化に有効。姿勢自由度が高い反面、技能差が品質差に直結。
• TIG:薄板・化粧・最終仕上げ、ルート部の初層などに。熱入力を緻密に制御でき、ビード外観に優れる。✨
• SAW(サブマージアーク):厚板の長尺直線。能率・溶込み安定に強み。フラックスの乾燥・回収・ふるいが品質鍵。⛏️
原理の超要約:アーク熱で母材・ワイヤを溶かし溶融池を形成→凝固で継手を作る。良品は清浄な溶融池と適正入熱から生まれる。

 

2|WPS/PQRの作り方と運用
• WPS(溶接施工条件書)には、母材・開先・ワイヤ径・極性・電流/電圧・速度・熱入力・予熱温度・パス間温度・層数・姿勢・シールドガス・乾燥条件を数値で明記。
• PQR(手順適合性記録):代表試験体で溶接→曲げ・硬さ・衝撃(必要に応じ)を実施し、WPSの妥当性を裏付け。
• 熱入力の目安(概念式):熱入力 ≈ (電流 × 電圧 × 60 × 係数) / 速度 。過大→粗大組織・歪大、過小→溶け込み不足・融合不良。
• 予熱・パス間:板厚・炭素当量・拘束度から設定。低すぎ→割れ、 高すぎ→靱性低下・歪増。
• 改定管理:現場の“口伝”で勝手に条件変更しない。改定番号(R)と履歴、掲示版/バーコードで最新版を即時共有。

 

3|継手・開先と姿勢の勘所
• 突合せ(V/Y/K):板厚・片面/両面・裏当て有無で選定。ルート間隔・開先角・面取りは治具とゲージで統一。
• 隅肉:設計サイズとのど厚を守る。過大は見かけ品質が上がっても入熱過多で歪・コスト増。
• 姿勢:下向>横向>立向>上向の順で難度UP。上向は入熱管理とトーチ角度がシビア。

 

4|典型欠陥のメカニズムと未然防止
• アンダーカット:電流過大・速度過大・トーチ角過大。→電流-10%・角度10〜15°に是正、繋ぎ目で一瞬減速。
• オーバーラップ:速度過小・電圧低下・入熱過多で溶融金属が乗る。→電圧+、速度+、繋ぎで“払う”。
• ピット/ブローホール:素地の水分・油分・錆・ガス流量不足。→前処理徹底、風速対策、ガス流量安定化。
• 溶け込み不足/融合不良:電流不足・角度不良・開先形状不備・スラグ巻込み。→条件復帰、ビード振り幅を狭く、清掃徹底。
• 割れ(熱割れ/冷割れ):過大拘束・高硬化組織・水素。→予熱・乾燥、層間温度管理、拘束緩和・反対称溶接。

 

5|歪みを制する段取りと溶接順序
• 対称溶接:左右・表裏を小パスで交互に。長大物はブロック溶接(分割)で収縮を分散。
• バックステップ:溶接方向と逆に短パスで刻む。収縮方向を制御。
• 仮付:小さく多点、要所に。強過ぎる仮付は割れ源。撤去容易な位置と長さをルール化。
• 治具:通り・直角・たわみ止め。治具設計で歪取り工数を前倒し削減。
• 余肉と仕上げ代:熱歪み見込みで余肉設定。仕上げで寸法合わせ。
• 温度管理:パス間温度計を常備、上限を超えたら冷却時間を置く。️

 

6|材料・ワイヤ・ガス・消耗品の管理
• ワイヤ保管:未開封は乾燥、開封後は湿気厳禁。フラックス系は乾燥炉で規定温度管理。
• ガス:流量は一定、リーク点検。風の影響を受ける場所では風防や流量UP。
• 開先面の清浄:ミルスケール・油・塗膜は必ず除去。前処理が最大の欠陥予防。

 

7|技能・設備・校正
• 溶接機校正:年1回以上。電流電圧の指示誤差を把握し補正表を掲示。
• トーチ消耗品:ノズル・コンタクトチップの摩耗でアーク不安定→交換周期をKPI化。
• 技能認証:資格の範囲内作業を徹底。新人は外観合格率・手直し率で育成可視化。

 

8|現場溶接の落とし穴と対策 ️
• 風・湿気:ブローホール頻発。風防・テント・結露チェック、露点差の確認。
• 姿勢強要:治具不足で無理姿勢→欠陥増。簡易治具・足場改善で“楽な姿勢”を作る。
• 安全:感電・火傷・火災。ケーブル損傷点検、火花養生、消火器配置、休憩時の電源OFF。

 

9|検査・判定と是正フロー
• 外観検査:ビード幅・余盛・連続性・ピット・アンダーカット。合否の寸法基準を図示化。
• 非破壊検査:UT/MT/PTの選定と抜取率(例:重要部100%、標準部20%など)を契約で明確化。
• 記録:溶接マップ、ロット、溶接者コード、WPS番号、校正記録を紐付け。トレーサビリティがクレーム抑止。
• 是正:削り・肉盛り・再溶接は範囲と手順を文書化。過補修で母材傷めない。

 

10|“今日から効く”チェックリスト ✅
☐ WPS最新版の掲示と改定番号一致
☐ 予熱・パス間温度の記録(温度チョーク/非接触計)
☐ ガス流量・風速の確認、風防の有無
☐ 開先の油・水分・塗膜除去済
☐ 仮付位置・長さの標準化
☐ 溶接順序の作業前ミーティング
☐ 溶接機校正日とトーチ消耗品の交換履歴
☐ 外観・NDTの合否基準表の配布

 

まとめ
溶接品質は入熱・清浄・姿勢・順序の積み上げで決まります。欠陥ゼロへの最短距離は、WPSを“守らせる仕組み”と、誰もが同じ条件で作業できる治具と段取りにあります。次回は、品質管理・検査のリアルをテーマに、許容公差・ゲージ・UT/MT/PTの勘所、判定・是正の“実戦手順”を掘り下げます。

 

 

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第20回鉄骨加工雑学講座

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“図面どおりの鉄骨”は、どのような工程を経て生まれるのか。ここでは朝の受け入れ検査から夜の積込まで、典型的な一日を時系列で追いかけます。現場に効くチェックリストも添えました。📝

 

7:30|受け入れ検査・段取り 🧾
• 入荷鋼材の確認:寸法、曲がり、錆、端面欠け、ヒートNo.。ミルシート突合せで材質トレース。
• 作業会議:当日計画、ボトルネック工程、応援要員、外注搬入時間の共有。
• 治具・工具点検:バンドソー、開先機、ドリル、ポジショナ、クレーン、溶接機、トルクレンチ校正。🧰

 

8:30|切断:正確さは“入口で決まる” ✂️
• バンドソー/丸鋸:H形鋼・山形鋼の直角切断。切粉処理と刃の摩耗管理が品質を左右。
• ガス/プラズマ:厚板・特殊形状。熱歪み見込みで余肉を残し、仕上げで整える。
• 材長取り:歩留り最適化。余長は後工程のスペーサや当て板に活用。📏

 

10:00|孔あけ:NCで“穴位置”を外さない 🕳️
• NCドリルライン:梁ウェブ・フランジの通し孔。切削油管理でビビリ抑制。
• ケガキ→ボール盤:特注・小物は手作業。冶具で反復精度を上げる。
• 穴品質:バリ取り、面取り、孔精度(±0.5mm目安を社内基準化)をチェック。

 

11:00|開先:溶接“成功率”を上げる前準備 🔺
• V/Y/K開先:板厚・姿勢・入熱から設計。ルート間隔と面取り角度はWPS基準で統一。
• ミルスケール除去:グラインダ、ショットで清浄化。油分残りはブローホール原因に。

 

12:00|昼休み&5S 🍱✨
• 治具・工具を元位置へ。切粉・スパッタ・端材を整理。午後の段取りが速くなる。🧹

 

13:00|組立:治具と仮付で“ズレ”を殺す 🧩
• 治具:直角・通り・たわみを制御。経験値が“段取り時間”と“歪取り量”に直結。
• 仮付溶接:小さく多点で配置。強すぎる仮付は割れと歪の温床。
• ケガキ・番付:部材記号、向き、ボルト種別を見て分かる表示に。

 

14:00|本溶接:入熱・姿勢・順序で“歪み”を制す 🔥
• MAG(CO₂/MAG):能率と汎用性。電流・電圧・送給の三位一体でビード安定。
• TIG:薄板・仕上げ重視・現場補修。
• SAW:厚板の長尺直線に最適。フラックス乾燥と回収管理が肝。
• 溶接順序:対称・反対側・分割多層で歪み低減。パス間温度管理を忘れず。🌡️

 

15:30|仕上げ・歪取り・面検 🔍
• ハンマ・ガスヒートで矯正。過熱による材質劣化に注意。
• 溶接外観:アンダーカット、オーバーラップ、ピット、割れ、気孔の一次検査。
• 寸法公差:直角・通り・穴ピッチ・基準面をゲージで確認。記録はロット単位で。📑

 

16:30|塗装前処理・塗装 🎨
• 前処理:ブラスト/ショットで素地調整(Sa2.5目安)。
• プライマー:亜鉛リッチやエポキシ系など仕様に準拠。膜厚はウェット/ドライで管理。
• 環境:温度・湿度・露点差を監視。結露条件下は塗装NG。🌦️

 

18:00|表示・積込・ラッシング 🏷️⛓️
• 番付・向き、取合い注意、吊り位置を明記。傷防止の当て木・保護材を準備。
• ラッシング:荷重・ブレーキ時の横圧を考慮。偏荷重は危険。ドライバーと最終確認。

 

現場に効くチェックリスト ✅
☐ 材料とミルシートの突合せ完了
☐ NCデータと図面改定の整合(改定記号Rの取り違い防止)
☐ 仮付位置・量の標準化
☐ WPS遵守(電流・電圧・速度・予熱・パス間温度)
☐ 非破壊検査の抜取%と頻度の事前合意
☐ 塗装の露点管理と膜厚記録
☐ 積載図とラッシング計画の承認

 

まとめ 📝
鉄骨製作の品質は“段取りと標準化”で決まります。ボトルネックの可視化、治具設計、NCデータの信頼性、WPSの運用、そして現場との情報連携。これらを地道に積み上げることが、手戻りゼロ/再作ゼロへの最短ルートです。次回は溶接に特化して、実務のノウハウと不具合ゼロのコツを掘り下げます。💪

 

 

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第19回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

「鉄骨加工って、結局なにをしているの?」——建物やプラント、倉庫、商業施設、学校、橋梁など、私たちの周囲に立つ“フレーム”を、図面どおりに安全・高品質・期日内で作り、現場で建てられる状態まで仕上げるのが鉄骨加工業の使命です。
本稿では、元請・設計・ファブ(鉄骨製作工場)・現場施工(建方)・検査機関など多くの関係者が連動する全体像を、やさしく・実務目線で解説します。初学者にも、現場担当の実務者にも「俯瞰地図」として役立つはずです。

 

1|プロジェクトの流れ(超要約)
1. 計画・設計:意匠・構造設計がBIM/CADで骨組みを定義。部材断面(H形鋼、溝形鋼、角形鋼管など)や材質(SS400、SN490 ほか)、接合方式(溶接・高力ボルト)を決定。
2. 見積・契約:ファブは図面・数量から積算し、加工費・材料費・運搬費・建方費・塗装費などを見積。コストとリスク(納期、仕様変更)を織り込みます。
3. 詳細設計(ショップ図):工作図・部品図・ボルトリスト・治具設計・材長取りを詰めます。Teklaなどの3DモデルからNCデータ(切断・孔あけ)を生成。
4. 材料調達:ミルシート(材質証明)付き鋼材を手配。入荷後、寸法・外観・ヒートNo.を確認し受け入れ検査。
5. 製作:切断→孔あけ→開先→けがき→組立→仮付→本溶接→歪取り→仕上げ→塗装→表示の順で進行。各工程で中間検査を行い、トレーサビリティを保持。⚙️
6. 出荷・運搬:積載計画(全長・重量・偏荷重)とラッシングを設計。道路使用や幅員、橋荷重もチェック。
7. 建方(現場組立):クレーン計画・揚重計画・玉掛け・高力ボルト本締め・現場溶接。仮ボルト→本締め→トルク確認→マーキングまで。
8. 検査・引渡し:寸法・通り・直角・レベル、超音波探傷(UT)、磁粉探傷(MT)などの非破壊検査、塗膜厚測定、是正・再検査を経て完了。✅

 

2|鉄骨“価値”のコア:QCDSE
• Q(品質):強度・剛性・靱性・寸法公差・溶接品質・塗装耐久・トレーサビリティ。
• C(コスト):材料歩留り、治具・段取り、ロット最適化、外注活用、再作業の削減がカギ。
• D(納期):上流での図面FIX、NC化による自動化、ボトルネック把握、二交替などの運用。⏱️
• S(安全):火災・感電・挟まれ・飛来・墜落のリスク管理。KY(危険予知)+5S+保護具。
• E(環境):前処理・塗装のVOC、研磨粉、端材リサイクル、電力削減、LCA/CO2管理。

 

3|コスト構造と“儲けどころ”
• 材料費が最大。材長取りと歩留り最適化、端材再利用で差が出る。
• 加工費は段取りとタクトタイム短縮、セット替えの削減で効く。
• 塗装費は仕様で上下。亜鉛リッチ、溶融亜鉛めっき、耐火被覆など要件の早期確定が重要。
• 物流費は積載効率・ルート・混載の工夫で最適化。

 

4|“手戻り”を防ぐ要点 ✍️
• 設計照合:工作図レビュー会を早めに。干渉・現場取合い・階段・手すり・ブレース・梁貫通をBIMで潰す。
• 品質条件の明確化:溶接WPS、許容欠陥、塗装仕様、検査手順、トルク管理を契約前に文書化。
• 変更管理:RFI(照会)→承認→履歴管理。口約束はNG。

 

5|現場との“いい関係”
• 揚重計画と建方順序を共有。先行部材・仮設材のマーキングを明確に。
• ボルト供給責任と工具校正の管理。レンチ校正記録は現場で提示できるように。
• 是正の即応:溶接肉盛り、座金追加、スチフナ追加など、手配と承認ルートを短く。

 

6|用語ミニ辞典
• WPS/PQR:溶接施工条件書と手順の適合性証明。
• UT/MT/PT:超音波・磁粉・浸透探傷の非破壊検査。
• F10T:高力ボルトの強度区分。仮→本締め→トルク確認。
• トレーサビリティ:ヒートNo.で材料→部品→製品→現場まで追跡。

 

7|まとめ ✅
鉄骨加工業は“製造業”であると同時に“建設業”でもあります。設計・製作・物流・建方・検査を一気通貫でデザインし、“QCDSE”の最適点を狙うことが勝ち筋です。次回は、工場ラインの1日を追いかけながら、実務のディテールに踏み込みます。

 

 

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第18回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!

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~“揺れに強い骨”をつくる~

 

耐震性能を引き出す鍵は、高力ボルト・溶接・柱脚の三点。どれか一つでも甘いと、通り精度や長期耐久に響きます。現場で役立つ実務の型を、ミスが起きやすい順にまとめました。


1|高力ボルト:初期設定で勝負が決まる

  • 保管:乾燥・未開封・ロット別。サビ・油分は締付性能に直結

  • 穴・座面:切粉除去/座面の平滑性確認(異物はNG)

  • 試し締め:当日ロットで工具校正→本番へ

  • 締付手順本数→対角→外周の順で段階締付/マーキングで見える化

  • 検査:軸力管理方式に合わせて記録(トルク・表示ピン・回転角等)

ありがちNG⚠️:仮締めのまま次工程へ。マーキング未実施は抜けの合図。


2|溶接:WPS(施工要領)を“紙から現場へ” ➡️

  • 予熱・層間温度を計測・記録(低温時は特に)

  • 開先精度・ルート間隔を統一し溶け込みを確保

  • 歪み対策は対称溶接・短ビード・裏当てを使い分け

  • 外観OKでも内部欠陥はあり得る→必要に応じUT/MT/PTを計画的に

写真は「開先→仮付→本溶接→外観→NDT結果」の時系列がわかるように。


3|柱脚:建物の“足首”を丁寧に

  • アンカー位置・レベル墨出し→二重確認

  • レベリング(ベース下):座金・ナットの接地面確保

  • 建方後:通り・鉛直・建入れ調整→グラウトで剛結を完成

  • 防錆:グラウト面・端部のタッチアップを忘れずに


4|通り精度と“後戻りゼロ”の運用

  • 基準柱で全体の芯を固定→梁で通り連結

  • 階ごとに仮ブレースを計画配置し、本締め前の狂いを抑える

  • 建方階層の完了定義(本締め/タッチアップ/清掃)を明確化


5|塗装・耐火を活かす段取り

  • 素地調整→下塗→中・上塗の工程を膜厚計で数値管理

  • 耐火被覆(吹付・巻付)の仕上げ厚欠損補修は写真で可視化

  • 取合い(梁端・仕口)は先行タッチアップでサビ起点を作らない


6|安全第一:揚重・高所・天候 ️

  • 玉掛け指示は手元・クレーン間で合図統一

  • 開口部は先行手摺・親綱で恒常化

  • 強風・雷雨中止基準を施工計画書に明記し、毎朝周知


7|原価と工期を守る“小ワザ” ⏳

  • 標準化部材(スプライス位置・仕口寸法)で製作を平準化

  • 現場溶接の最小化:ボルト化と仮組確認で手戻り削減

  • 写真台帳の自動化(クラウド/QR)で検査〜承認を短縮


8|チェックリスト✅

  • 高力ボルト 校正・マーキング完了

  • 溶接 予熱・層間・外観・NDT記録

  • 柱脚 建入れ・グラウト・タッチアップ

  • 塗膜 膜厚・欠損補修・最終確認

  • 安全 開口養生・墜落対策・風速基準


高力ボルト×溶接×柱脚の三点を“記録と順序”で管理すれば、品質は安定し、是正回数は激減します。

 

 

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第17回鉄骨加工雑学講座

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~“現場が止まらない”~

鉄骨は「図面通りに作って立てる」だけでは回りません。設計・製作・建方が一体となった段取りで、通り精度・工期・安全を同時に成立させるのがプロの仕事。この記事では、現場でそのまま使える勝ちパターンを、チェックリスト付きで解説します。✨


1|全体工程MAP(まず全体像)️

  1. 基本設計・詳細検討(仕口・継手・耐火仕様)

  2. 施工図・現寸(衝突・納まり検証)

  3. 材料手配・トレーサビリティ設定(ミルシート紐づけ)

  4. 工場製作(開先→仮付→本溶接→矯正→孔あけ→仮組)

  5. 素地調整・塗装/耐火仕様の確認

  6. 出荷・輸送(番付・荷姿計画)

  7. 建方(クレーン計画・通り出し・本締め)

  8. 最終調整・検査・引渡し

コツ:“前工程で次工程の条件を確定”。未決のまま進めると全てが後手に回ります。


2|設計・ディテールの要点(不具合の8割はここで決まる)

  • 柱梁仕口:高力ボルト本数/ピッチ、座金の当たり、レンチクリアランス

  • 梁成・スリーブ衝突:設備・ダクト・配管との干渉はBIMや干渉表で先消し

  • デッキ合成:スタッド位置と溶接可否、端部の座屈止め

  • 柱脚:アンカー配置・ベースプレート厚・グラウト納まり


3|材料・トレサ管理(後追いできる体制)

  • ヒートNo.→部材ID→台帳を一気通貫で紐づけ

  • 端材は長さ・断面別で保管し、流用先を明記(歩留まりUP)

  • 孔あけ・切断はネスティング最適化で残材率を見える化


4|工場製作の勘所(まっすぐ作る)

  • 溶接順序で歪みをコントロール(対向・対称・短ビード)

  • 仮組検査で取合い・ボルト通りを事前確認

  • 素地調整→下塗りは仕様書に沿って等級・膜厚を記録

  • 孔精度・面取りで建方時のボルト入らない問題を撲滅


5|出荷・輸送(建方順=積み順)

  • 部材は番付順で積載、吊りポイントをマーキング

  • 長尺物は撓み養生、塗装面の当たり養生を徹底

  • 納入伝票に部材ID/番付/設置位置を明記し現場受入れを時短


6|建方計画(クレーンと風と人の動線)️️

  • 揚重計画:作業半径・ジブ長・吊荷重表で余裕を確保

  • 通り出し:基準通り(X→Y→高さ)で基準柱を先に決める

  • 仮ボルト→本締めの順序・階ごとの仮ブレースを事前定義

  • 強風・雷・降雨時の中止基準は明文化(現場裁量にしない)


7|精度・安全・品質のチェックリスト ✅

  • 柱鉛直・通り(レーザー/トランシットで記録)

  • 高力ボルト:下穴清掃・ワッシャー面・締付順序・マークオフ

  • 溶接部:外観(クレータ/アンダーカット)→必要に応じ非破壊検査

  • 塗膜:膜厚・タッチアップ記録

  • 仮設:手摺・親綱・開口養生の継続管理


8|写真台帳

「日付_工区_部位_内容」

  1. 全景(建方エリア) → 2) 部位(仕口・柱脚) → 3) 寸法UP(スケール写り込み)
    是正後は同アングルで再撮。Before/Afterが一目で分かるように。


鉄骨工事は段取りの競技。設計→製作→建方を一本の線でつなぐだけで、通り不良・再作業・待ち時間が劇的に減ります。

 

 

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第16回鉄骨加工雑学講座

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~経済的役割~

ということで、鉄骨加工業が担う経済的価値を5つの視点から深く掘り下げて解説していきます。

ビル、工場、商業施設、倉庫、橋梁――これら大型建築物の“骨組み”を支えるのが「鉄骨」です。
その鉄骨を正確に、効率よく、強度と美しさをもって加工するのが鉄骨加工業です。

一見すると地味で目立たない業種かもしれませんが、その経済的役割は非常に大きく、建設業界だけでなく、製造・雇用・地域経済・国際競争力にまで波及する重要な基幹産業です。


1. 建設投資を支える基幹工種としての役割

建築物の約7割が鉄骨構造であるといわれる現代日本において、鉄骨加工は建設業界の中核を担う存在です。

  • 大規模建築物には必須の構造部材
     商業施設や工場、物流倉庫などの建設は、鉄骨なくして成立しません。

  • 工期短縮と高精度施工によるコスト削減
     加工精度の高さは建築現場での組立効率に直結し、建設費や工期全体に大きく影響を与えます。

つまり、鉄骨加工業が存在しなければ、建設業界の供給能力や価格競争力は大きく損なわれるということです。


2. 雇用と人材育成による地域経済への貢献

鉄骨加工業は、全国各地に中小企業が点在する地域密着型の産業です。

  • 地域に根ざした製造・加工の雇用を創出
     地方都市や郊外でも雇用機会を提供し、地元の産業を支える存在。

  • 若手技能者の育成・技能実習制度の活用
     手に職がつく仕事として、次世代人材の教育・雇用の場となっています。

  • 関連職種への波及
     製図・設計・検査・溶接・塗装など、多くの専門職が連携し、地域に経済的波及効果をもたらします。

これにより、鉄骨加工業は単なる「製造業」ではなく、地域社会の雇用と技術継承の基盤でもあるのです。


3. 鉄鋼業・機械業など他産業との連携による経済波及効果

鉄骨加工業の経済的インパクトは、周辺産業にも広く及びます。

  • 鉄鋼メーカー・商社との取引
     原材料である鋼材の流通量に影響し、国内の鉄鋼流通を支えます。

  • 機械メーカー・工具商社との需要連動
     切断機、溶接機、3Dレーザー加工機などの投資により、産業用機器メーカーの成長にも貢献。

  • 建材流通・物流業界との接点
     納品・輸送・保管といったサプライチェーン全体に影響。

これらの産業を巻き込みながら、鉄骨加工業は「産業のハブ」として日本の経済構造に大きな役割を果たしています。


4. インフラ投資・都市開発を支える“経済推進力”

都市の発展やインフラ整備には、必ず鉄骨が関与します。

  • 大型再開発や公共事業の根幹
     駅ビル、空港、スタジアム、橋梁、高速道路など、国のインフラ事業に不可欠。

  • 災害対応・防災建築の需要増
     地震・水害に強い建築物の構造材として需要が増加。

これらのプロジェクトが進むことで、地域経済への波及効果(建設投資、消費拡大、雇用創出)も生まれます。鉄骨加工業はその土台をつくる存在として、経済成長を促す触媒的役割を担っているのです。


5. グローバル市場における日本の競争力を支える技術産業

日本の鉄骨加工業は、高い技術力と精密な加工品質によって、海外と比較しても非常に高い評価を受けています。

  • 海外大型プロジェクトへの輸出・技術協力
     アジア・中東などでの日本製鉄骨の採用や、設計・施工の監修。

  • 海外企業からの加工依頼や共同開発
     “Made in Japan”の品質が求められる場面は少なくありません。

  • グローバル建築企業との連携
     大手ゼネコンと連携し、国際的な競争力を支えます。

こうした国際展開によって、鉄骨加工業は日本全体の産業競争力の一翼を担う存在とも言えるのです。


鉄骨加工業は経済を動かす“縁の下の柱”

鉄骨加工業は、建設業界の一部門にとどまらず、

  • 建築コストと品質の鍵を握る存在

  • 地域雇用と中小企業の基盤

  • 他産業への波及力をもつハブ産業

  • インフラ・都市開発を支える原動力

  • 国際競争力を生む技術力の象徴

という多面的な経済的価値を持っています。

目立たない存在かもしれませんが、社会を下から支え、未来を築く「鉄の力」。
それを生み出す鉄骨加工業の存在こそ、経済の柱の一つといえるのではないでしょうか。

 

 

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~多様化~

ということで、鉄骨加工業の多様化について、技術・対応領域・人材・社会的意義などさまざまな視点から深く掘り下げていきます。

 

高層ビルや工場、橋梁、物流倉庫、商業施設など、私たちの生活や産業を支える大規模建築の骨組みには、必ずと言ってよいほど「鉄骨」が使われています。
その鉄骨を加工し、図面どおりの精度で提供するのが鉄骨加工業です。

かつては「決まった形に鉄を切る・溶接する」といった単純な作業の繰り返しが中心でしたが、現在では社会ニーズの多様化や建築技術の進歩により、鉄骨加工業の役割もまた多様化の時代を迎えています。


1. 対応建築物の多様化:あらゆる構造を支える

鉄骨加工は、もはや一部の大型建築物にとどまりません。

  • 高層建築・商業施設・大型工場:従来からの主戦場。

  • 小規模住宅・木造とのハイブリッド構造:耐震補強や吹き抜け構造などで鉄骨を部分的に使用。

  • 特殊施設(スタジアム・美術館・駅舎など):意匠性・構造的工夫が求められる複雑形状への対応も増加。

これにより、鉄骨加工業は「汎用的なものを大量に作る」だけでなく、「一点モノの加工」にも対応する必要が出てきています。


2. 技術と設備の多様化:高度化する加工ニーズに対応

図面通りに鉄を加工する精度の高さはもちろん、近年では以下のような技術的な多様化が進んでいます。

  • レーザー切断機・プラズマ切断機の導入:複雑な形状でも美しく正確な加工が可能に。

  • 3D CAD・BIMと連動した製作図管理:設計段階からの情報連携でミスを防ぎ、効率化。

  • 自動溶接ロボット・孔あけ機の活用:省人化と品質均一化を両立。

  • 高強度鋼・軽量鋼材など新素材の対応力:構造的ニーズに合わせた多様な材質への知見も重要。

こうした最新設備と熟練技術の“融合”によって、鉄骨加工はより柔軟で高品質な産業へと進化しています。


3. 生産形態の多様化:少量多品種・短納期に対応

建設業界全体で「短工期・高精度」が求められる中、鉄骨加工にも次のような変化が起きています。

  • 大量ロットから多品種小ロットへ
     現場に合わせた“必要な量だけ”の加工が重視される傾向に。

  • ジャストインタイム納品
     現場の施工進行に合わせて納品タイミングを調整するなど、納品スタイルの柔軟性が求められる。

  • 現地溶接・現地加工への対応
     現場に職人を派遣して、組立・補修・追加加工を行う体制の構築。

こうした「柔軟な対応力」も、鉄骨加工業の競争力を高める要因のひとつです。


4. 人材と組織の多様化:多世代・多国籍の職場へ

人手不足が深刻化する建設業界の中でも、鉄骨加工業は人材の多様化が進んでいます。

  • 若手技能者の育成とデジタル教育:熟練の技術をARや動画で伝承する取り組み。

  • 外国人技能実習生・特定技能人材の活用:多国籍化が進む職場環境でのマネジメント強化。

  • 女性やシニアの現場参加:軽量素材や自動化設備の導入で、多様な人材が活躍できる職場づくりが可能に。

また、経営者・管理者にもITリテラシーやマネジメント能力が求められるなど、職種の幅も広がっています。


5. 環境・社会ニーズへの多様な対応

建設現場でのCO₂排出削減や環境配慮が求められる今、鉄骨加工業もその一翼を担っています。

  • 省資源設計(最小断面・最小溶接)への対応
     設計段階から鉄の使用量を抑える知見が必要。

  • スクラップ再利用・切断残材のリサイクル
     加工現場でのゴミ削減や再資源化が進行。

  • 災害対応建築や仮設構造物へのスピード対応
     地震・水害後の復旧構造物などにも即応できる体制が重要。

「鉄骨=環境負荷が高い」という旧来のイメージから脱却し、持続可能な建築の一翼を担う業種へと進化しています。


鉄骨加工業は“建築の骨”を超えて、“価値”を生み出す産業へ

建物の「骨組み」をつくる仕事は、今や形を支えるだけでなく、技術力・柔軟性・持続可能性・美しさまで問われる仕事になりました。

鉄骨加工業はこうした多様化に対応することで、ただの“加工業”から“価値創造業”へと進化しています。

  • 多様な建築ニーズに応える設計力

  • 高精度かつ柔軟な加工技術

  • 多様な人材が活躍できる職場

  • 地域社会や環境に配慮した企業活動

未来の建築に求められるのは、こうした多様性を備えた鉄骨加工業の存在なのです。

 

 

 

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