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第19回鉄骨加工雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社塚本鉄工所、更新担当の中西です。

 

「鉄骨加工って、結局なにをしているの?」——建物やプラント、倉庫、商業施設、学校、橋梁など、私たちの周囲に立つ“フレーム”を、図面どおりに安全・高品質・期日内で作り、現場で建てられる状態まで仕上げるのが鉄骨加工業の使命です。
本稿では、元請・設計・ファブ(鉄骨製作工場)・現場施工(建方)・検査機関など多くの関係者が連動する全体像を、やさしく・実務目線で解説します。初学者にも、現場担当の実務者にも「俯瞰地図」として役立つはずです。

 

1|プロジェクトの流れ(超要約)
1. 計画・設計:意匠・構造設計がBIM/CADで骨組みを定義。部材断面(H形鋼、溝形鋼、角形鋼管など)や材質(SS400、SN490 ほか)、接合方式(溶接・高力ボルト)を決定。
2. 見積・契約:ファブは図面・数量から積算し、加工費・材料費・運搬費・建方費・塗装費などを見積。コストとリスク(納期、仕様変更)を織り込みます。
3. 詳細設計(ショップ図):工作図・部品図・ボルトリスト・治具設計・材長取りを詰めます。Teklaなどの3DモデルからNCデータ(切断・孔あけ)を生成。
4. 材料調達:ミルシート(材質証明)付き鋼材を手配。入荷後、寸法・外観・ヒートNo.を確認し受け入れ検査。
5. 製作:切断→孔あけ→開先→けがき→組立→仮付→本溶接→歪取り→仕上げ→塗装→表示の順で進行。各工程で中間検査を行い、トレーサビリティを保持。⚙️
6. 出荷・運搬:積載計画(全長・重量・偏荷重)とラッシングを設計。道路使用や幅員、橋荷重もチェック。
7. 建方(現場組立):クレーン計画・揚重計画・玉掛け・高力ボルト本締め・現場溶接。仮ボルト→本締め→トルク確認→マーキングまで。
8. 検査・引渡し:寸法・通り・直角・レベル、超音波探傷(UT)、磁粉探傷(MT)などの非破壊検査、塗膜厚測定、是正・再検査を経て完了。✅

 

2|鉄骨“価値”のコア:QCDSE
• Q(品質):強度・剛性・靱性・寸法公差・溶接品質・塗装耐久・トレーサビリティ。
• C(コスト):材料歩留り、治具・段取り、ロット最適化、外注活用、再作業の削減がカギ。
• D(納期):上流での図面FIX、NC化による自動化、ボトルネック把握、二交替などの運用。⏱️
• S(安全):火災・感電・挟まれ・飛来・墜落のリスク管理。KY(危険予知)+5S+保護具。
• E(環境):前処理・塗装のVOC、研磨粉、端材リサイクル、電力削減、LCA/CO2管理。

 

3|コスト構造と“儲けどころ”
• 材料費が最大。材長取りと歩留り最適化、端材再利用で差が出る。
• 加工費は段取りとタクトタイム短縮、セット替えの削減で効く。
• 塗装費は仕様で上下。亜鉛リッチ、溶融亜鉛めっき、耐火被覆など要件の早期確定が重要。
• 物流費は積載効率・ルート・混載の工夫で最適化。

 

4|“手戻り”を防ぐ要点 ✍️
• 設計照合:工作図レビュー会を早めに。干渉・現場取合い・階段・手すり・ブレース・梁貫通をBIMで潰す。
• 品質条件の明確化:溶接WPS、許容欠陥、塗装仕様、検査手順、トルク管理を契約前に文書化。
• 変更管理:RFI(照会)→承認→履歴管理。口約束はNG。

 

5|現場との“いい関係”
• 揚重計画と建方順序を共有。先行部材・仮設材のマーキングを明確に。
• ボルト供給責任と工具校正の管理。レンチ校正記録は現場で提示できるように。
• 是正の即応:溶接肉盛り、座金追加、スチフナ追加など、手配と承認ルートを短く。

 

6|用語ミニ辞典
• WPS/PQR:溶接施工条件書と手順の適合性証明。
• UT/MT/PT:超音波・磁粉・浸透探傷の非破壊検査。
• F10T:高力ボルトの強度区分。仮→本締め→トルク確認。
• トレーサビリティ:ヒートNo.で材料→部品→製品→現場まで追跡。

 

7|まとめ ✅
鉄骨加工業は“製造業”であると同時に“建設業”でもあります。設計・製作・物流・建方・検査を一気通貫でデザインし、“QCDSE”の最適点を狙うことが勝ち筋です。次回は、工場ラインの1日を追いかけながら、実務のディテールに踏み込みます。

 

 

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